特集 認知症の当事者研究のために─老年看護学の視座を拓く
認知症の当事者研究とは何か―超高齢社会の生き方・看護・研究の共創に向けて
永田 久美子
1
1認知症介護研究・研修東京センター研究部
キーワード:
認知症
,
当事者研究
,
実体験
,
本人による語り
,
共創
Keyword:
認知症
,
当事者研究
,
実体験
,
本人による語り
,
共創
pp.254-262
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100782
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
はじめに─素朴な問い
「認知症の医療やケアって言うけど,本人に聞かないで,なんでやれるんでしょうかね……?」
これは,2010年7月に宮城県が開催した研修で,100名近くのケア関係者の前に立った67歳の男性(アルツハイマー型認知症)が語った言葉である。
男性は,遠慮がちにこうも語った。
「医療や介護の人たちには,自分も家族も本当にお世話になり,感謝しています。でも……自己満足ではないですか?」
批判的な口調ではなく,消え入りそうな小声でつぶやかれた本人の言葉に,会場は水を打ったように静まり返った。
この言葉は,当日参加した人たちのみではなく,いま,ケアの現場で働く1人ひとりの人たち,そして看護研究に取り組む人たちすべてに投げかけられた,本人からの素朴な問いではないだろうか。
「本人に聞かないで,なんでやれるのか」
「自己満足ではないか」
本稿のテーマである「当事者研究とは何か」を考えていく原点として,この男性の言葉を冒頭に刻みつけておきたい。
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.