書評
社会調査の基礎を学べる初学者必携の書
石井 京子
1
1前・大阪市立大学大学院看護学研究科
pp.234
発行日 2013年4月15日
Published Date 2013/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100775
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米国社会学会機関誌の7割が計量分析を用いた論文であるとされるように,近年,科学的な検証を目的とした社会調査が多用されるようになり,問題点も指摘されている。我々の社会においても,方法の簡便さゆえに,ちまたには質問紙調査(俗にアンケート)があふれているが,多くの人に何かを問えばそこからなんらかのデータが得られ,パソコンを活用しデータ分析を行なうと,いかにも科学的な意味づけがなされたように思われてしまう。しかし,社会調査は目的や,普遍性や一般化を明らかにすることをめざしたものでなければ,調査としての意味づけは乏しいといわざるを得ない。そのため,調査を行なおうとする場合には,何のための調査か,何を明らかにしようとするのかをまず考える必要がある。
このように,社会調査とは,社会事象についてのデータを収集し,得られた情報の質的量的処理も踏まえて,妥当性・信頼性の高い結論を導くことで,対象である人間の意識や態度を明らかにし,そこに内在する因果関係を類推することである。そのため,社会調査を行なうには正しい方法を理解し,対象の無作為抽出,適切な質問,回収率などに留意することが基本となる。その結果,社会に有用であること,客観的であること,仮説検証的な可能性をもつこと,一般化できることなどが得られ,科学としての役割を果たすことができよう。2004年には日本でも社会調査士資格制度がつくられ,社会調査への精度向上が求められているのも,その重要性ゆえであろう。
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