特集 経験を記述する 現象学と質的研究
事象に示される通りに―フィールドワークという実践
西村 ユミ
1
,
前田 泰樹
2
1首都大学東京健康福祉学部
2東海大学総合教育センター
キーワード:
現象学的態度
,
フィールドワーク
,
協働実践
Keyword:
現象学的態度
,
フィールドワーク
,
協働実践
pp.400-408
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100674
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1.フィールドワークの経験へ
何らかの事象を探究しようとするとき,私たちはその事象に関心を向け,そこで見聞きしたことに言葉を与える。例えば筆者らは,急性期病棟における協働実践の編成のされ方に関心を向けて調査を行なってきた註1。急性期病棟に入院する患者のいのちや療養生活を支えるために,看護師たちが交代をしながら24時間にわたってケアを行なっていること,病棟には複数の患者が入院しており,彼らの援助を複数の看護師たちが協働して行なっていること,例えば,複数の患者を担当しながらそのつどの優先順位がいかに決まっているかということや,共に働く他の看護師たちの動きが,それを直接見ていなくてもわかっていること等々に,関心を向けてきた。しかし,これらの実践,複数の協働実践の仕方は,看護師たちに明示的に自覚されているわけではない。それゆえ,看護実践に伴走しつつ,そこで起こっていることを記録するフィールドワークを通して,看護師たちの実践を彼らの視点から探究することを試みた註2。
具体的には,総合病院の急性期病棟,および看護管理部門において調査を行なったのだが,その際,フィールドノーツに記したことの多くは,病棟の看護師たち,および看護管理部門の副部長の振る舞いや言動,さまざまな物の交換,注意を向けた患者の状態や他の看護師や医師の振る舞い等々であった。もちろん,研究の成果はこの記録に依存しているために,調査者が見たり聞いたりした看護師たちの実践が分析され記述される。
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