焦点 現象学的研究における「方法」を問う
看護ケアの実践知―「うまくできない」実践の語りが示すもの
西村 ユミ
1
1大阪大学コミュニケーションデザイン・センター
キーワード:
実践知
,
フォーカス・グループ・インタビュー
,
現象学
,
協働実践
Keyword:
実践知
,
フォーカス・グループ・インタビュー
,
現象学
,
協働実践
pp.49-62
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100490
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第1節
看護実践の成り立ちに分け入る
経験を積んだ看護師たちの視線は,患者の顔色や表情,全身から醸し出される雰囲気とも言える体調や気分,ちょっとした動きの違和感などに向けられており,その手は,眉間に皺を寄せて蹲っている身体へ差しのべられる。またこの実践は,特定の場面のみを切り取ると,1人の看護師が1人の患者に行なっていることと言えるが,例えば病院の病棟の状況を見ると,複数人の看護師が交代をしながら,複数人の患者たちの援助を24時間にわたって行なっている。前の勤務帯の看護師が知り得た患者の状態,実践した援助等々はさまざまな方法で次の勤務帯の看護師に伝えられる(西村,2007)。同じ勤務時間帯にともに働く看護師の実践にも注意が払われ,協働実践を成り立たせている(前田,西村,2010)。
こうした病いへの眼差しや応答性,あるいは病棟での協働実践は,看護師たちにとっては日常的で自明な営みであるために,それをいかに行なっているのかを説明することは難しい。いくつかの先行研究が,マイケル・ポランニー(1966/2003)の「暗黙知」註1という概念を参照して看護実践を論じてきたのも,それゆえであると思われる(ベナー&ルーベル,1989/1999 ; Herbig, Bussing, & Ewert, 2001 ; Carlsson, Drew, Dahlberg, & Lutzen, 2002;阿保,2009;池川,2009)。
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