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はじめに
病気や事故,加齢など,さまざまな原因によって身体や認知に障害をもつようになった人々は,深い苦悩を抱き絶望感さえ感じるようになる.そうした人々を絶望から救いだすため,医師や看護師,療法士は,リハビリテーションに関する医学や看護学,心理学といったさまざまな学問分野の理論に基づきながら援助ケアをしている.
リハビリテーション領域において,障害や慢性疾患の心理社会的な受容や適応というトピックは,最も重要で多くの研究がなされているものの一つである1,2).最近の英語圏での研究を概観すると,「障害の受容(acceptance of disability)」という概念の使い方に慎重であるように思われる.それは,障害をもつようになった人々にとって重要なのは,単に状況を受け容れることではなく,状況に合わせて自身の生活全般や考え方を変えていくことであると広く認識されるようになったためである.ゆえに,障害をもつようになった人々への援助ケアを指す場合,「障害への心理社会的適応(psychosocial adaptation to disability)」や「障害への心理社会的調整(psychosocial adjustment to disability)」という概念が使われることが多くなったように見受けられる.
本稿ではまず,「障害の受容」や「障害への心理社会的適応・調整」に関する研究の動向を概観し,近年の援助ケア理論の動向をつかみ取る.また,筆者が独自に行った脳卒中サバイバーたちへのフィールドワークを基に,医療専門職による従来の「障害の受容」理論による実践が当事者たちにどのように受け止められてきたか,そして当事者たちがどのような援助ケアを望んでいるのかを示す.さらに最後に,医療専門職の立場からどのような援助ケアをなしうるのかを考えるための手がかりを提示してみたい.
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