特集 質的研究を学び合う JRC─NQRの実践
社会構成主義の実践としての対話―Gergenの『あなたへの社会構成主義』から
濱田 真由美
1
1日本赤十字看護大学大学院看護学研究科博士後期課程
キーワード:
パラダイム
,
社会構成主義
,
批判
,
対話
,
Gergen
Keyword:
パラダイム
,
社会構成主義
,
批判
,
対話
,
Gergen
pp.260-265
発行日 2012年6月15日
Published Date 2012/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100654
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はじめに
質的研究の認識論的議論の1つの前提となっているのが,実証主義と社会構成主義ないし社会的構築主義(以下,社会構成主義と記す)である(Flick, 2007/小田監訳,2011, p.83)。
社会構成主義は実証主義と対照的な立場に位置し(Flick, 2007/小田監訳,2011, p.83),実証主義によって明らかにされた知識が社会的に優位な現代では,社会構成主義への批判や議論はなおも続いている。この社会構成主義者とその他のパラダイムに立つ人々との議論は,対立する立場にあるもの同士が,共に未来を形づくるという対話の始まりとみることができる。この対話は,私たちが「これは事実である(the real)」「これは善い(the good)」と考えているすべてのものの基盤を根底から揺さぶり,クリエイティヴな考えや行為を生み出すまたとない機会を提供するという,非常に重要な意味をもっている(Gergen, 1999/東村訳,2009, p.i)。
Gergen(1999/東村訳,2009)は,著書『あなたへの社会構成主義』の中で(『第9章 批判に答える』),社会構成主義に対する最も一般的な7つの疑問を選出し,それらの疑問に答えている(pp.325-351)。そこで今回,社会構成主義のパラダイムに立った研究を例示し,それに対する批判と回答をGergenの著書に基づいて述べ,対話を促進するきっかけにしたいと考える。
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