JIM Report
医療現場における構造構成主義の導入―構造構成的診療の提唱
加藤 温
1
1国立国際医療センター戸山病院精神科
pp.556-559
発行日 2009年7月15日
Published Date 2009/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101736
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はじめに ある診療会議の一場面
A医師「診断がつきました.治療ガイドラインに従ってC治療を行います」
B医師「なんで? この患者にはD治療ですよ」
A医師「はい? エビデンスレベルの高い大規模研究でC治療といってますから」
B医師「いやいや,私の臨床経験ではこのタイプの患者にはD治療ですよ.以前症例報告もしています」
A医師「今や経験論で治療する時代ではないでしょう.科学的じゃないですよ」
B医師「そんな患者の顔がみえない統計学で治療ができますかね」
ある診療会議のやりとりである.こうした意見の対立は決して珍しくないのではないだろうか.こうなると患者の治療はどこかに飛んでしまい,A医師とB医師によるお互いの正当性をめぐっての自己主張のぶつかり合いの場となってしまう.しまいには双方の関係が悪化し,チーム医療に破綻をきたしてしまうことにもなる.
構造構成主義は,こうした不毛な意見の対立状況をうまく解決する方法論を備えており,またその対立の一因ともなっている科学性をめぐる問題にも応用できる理論である.また,臨床現場における日常診療についても構造構成主義的観点を導入することができる.以下,構造構成主義の概説を行い,それをもとにして日常診療に関しても考察してみたい.
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