特別記事
看護における日本語オノマトペの意味
服部 兼敏
1
,
東山 弥生
2
1神戸市看護大学
2西神戸医療センター看護部
キーワード:
オノマトペ
,
暗黙知
,
看護実践
,
認知言語学
Keyword:
オノマトペ
,
暗黙知
,
看護実践
,
認知言語学
pp.315-323
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100452
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
看護場面で使われるオノマトペ
「カピカピ」,一体何のことだろう。看護の現場で用いられているこのコトバに初めて接する部外者は,驚くことになるだろう。説明を受けて,「カピカピ」とは,痰というもともと粘稠にあるものが乾燥した傾向に向かうときの状態であることがわかる。では「キンキン」とは。これは,腸閉塞の状態をいう。腸閉塞患者の腹部に当てた聴診器から聞こえる音が,「キンキン」という金属音に聞こえるために,このようにいわれるようになったそうである。さらに,浮腫が現われた状態,これは「プヨってる」と表現される。これらは,言語学でいうオノマトペ(擬音語,擬態語)である。
看護という専門領域では,微妙な患者の状態を表わし,その微妙な状態の変化に対応した手技を喚動(動きを呼び起す)するために,オノマトペが頻繁に用いられているのではないだろうか。患者の生死を左右するという極限状態において,また看護師が自分の生命すらかけなければならないような状況において,極限状態に対峙するに相応しい認知行動がとられているのではないだろうか。看護現場のエキスパートを観察していると,そうとしか考えられない言語行動がみられる。
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.