特集 看護研究におけるテキストマイニング(I)
看護の言葉をマイニングする―テキストマイニング研究概論
服部 兼敏
1
1神戸市看護大学
キーワード:
テキストマイニング
,
意味情報理論
,
認知言語学
,
語用論
,
メタファー
Keyword:
テキストマイニング
,
意味情報理論
,
認知言語学
,
語用論
,
メタファー
pp.462-474
発行日 2013年8月15日
Published Date 2013/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100819
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看護の言葉
看護師は,大量の記録を残す職種である。フィジカルアセスメントのような対象者のからだや健康状態についての記録,患者の日常生活など,看護師は病棟で,外来で日々膨大な記録を残している。残される情報も体温計や血圧計のような測定器具を操作することで得られる数値(比例尺度,間隔尺度),コーマ・スケールのように入力自体は感覚的であっても順序性のある数値(順序尺度),申し送りの際のメモ書きなど,記録の形態も種類もさまざまである。しかし,他の職種に比して圧倒的に多いのは,文章として残されたテキストデータである。
これほど多大な努力が背景にあるにもかかわらず,看護師が用いる表象を主観的であるとする批判もある。「ポタンポタン」とオノマトペを用いる点滴速度は,医者から「○○mL/hr」と記録するように指示が出る。しかし,急迫した状況の中で共同作業を行なう作業者同士には,効率的な情報交換があるはずである。その情報が的確に伝わるのは,その言語行為が慣習(convention)化しているからに違いない。教科書的には,音だけを表象する「捻髪音」や「水泡音」で通用するかもしれない。しかし臨床現場の看護師は,聴診器を通じて聞こえてくる音,胸郭の動き,肌の色の微妙な変化,肌に触れた温度感覚などを同時的に一体化して認知し,それらの認知の微妙な違いをオノマトペで表象している。
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