連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第15回
オノマトペが呼び招く
細馬 宏通
1
1滋賀県立大学人間文化学部
pp.906-907
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102331
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「どうですか、最近のヨシさん、自分で立ったりする動作とか、落ちてないですか」。グループホームのカンファレンスで、ひととおり報告が終わったあと、施設長さんが問いかける。こんなふうに、報告のあとにもう一押しするのが、施設長さんのうまいところだ。日誌に書いてあること、あらかじめ報告しようと思っていたことからは漏れてしまうできごとが、この一押しで拾い上げられることが多い。
「落ちてないけど……」と職員のカマタさんがちょっと言い淀んでから、「ここがぎちぎちなんねんな」と言う。「きちきちやんな、ここ」、向かいにいたシバタさんがすぐに応じる。「ここがぴちぴち」、カマタさんがまた繰り返す。あ、と、私はあわててモニタの前に駆け寄って映像を巻き戻す。実は、研究室の整理をしながら音を大きくして映像を流しっぱなしにしていたのだ。データをずっと見ているとだんだん目が疲れてくるので、ときどき気分転換に、こんなふうに音声だけを流すことがある。
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