焦点 EBPを根づかせていくための概念モデルと方略(II)─〈環境整備・実践編〉
看護の質向上に寄与するEBPが根づくために―実践と研究の循環
坂下 玲子
1
1兵庫県立大学看護学部
キーワード:
EBP
,
看護の質
,
PBE
,
practice-based evidence
,
translational research
Keyword:
EBP
,
看護の質
,
PBE
,
practice-based evidence
,
translational research
pp.305-312
発行日 2010年8月15日
Published Date 2010/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681100451
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はじめに
進まないEBP
前号および本号において,質の高いケア提供のためには,EBPは不可欠であることが語られ,その実施のための方略について述べられてきた。それでは,EBP先進国である米国ではEBPが広く普及しているかというと,状況はそう簡単ではない。
EBPのための実践指針としてガイドラインがあるが,医学の分野でさえガイドラインの遵守率は平均50%程度であると報告されている(Grilli & Lomas, 2000)。また米国での全国調査では,小児科医の89%は,ガイドラインに従えば成果が上がると考えているが,従っている医師は35%しかいないと報告されている(Flores, Lee, Bauchner, & Kastner, 2000)。多くのガイドラインが発表されているが,実践率は低く,ガイドラインは臨床家の行動変容を導いていないことが指摘され続けている(Timmermans & Mauck, 2005)。
看護の分野でもEBPの普及は大きな課題であり(Bostrom, Ehrenberg, Gustavsson, & Wallin, 2009),だからこそ前号から述べられているように,さまざまな方略が工夫されている。本稿では,EBPがなぜ根づきにくいのか,EBP実施のバリアについてもう一度概観したのち,わが国においてEBPが有効に展開されていく可能性について考えてみたい。
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