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はじめに
日常の看護実践は,対象のもつ特性や環境のさまざまな関係性のなかで行なわれている。質的研究による知見は,それら対象のおかれている状況や関係性を「文脈」として捉え,その関連性,方向性を詳細に記述するなかから生み出されており,看護実践への利用可能性,有用性が極めて高いものであるといえる。一方で,質的研究による知見は,ある固有な状況における対象者と環境の相互作用,看護援助の意味合いなどを解釈した,文脈依存性の高いものであることから,同様の現象について研究する他の論文の特定や,研究間の結果の比較分析が難しく,複数の質的研究による結果の集積,統合は,ごく限られた範囲でしか行なわれていない(Sandelowski, Dosherty, & Emden, 1997)。すなわち,質的研究により得られた多くの知見は,1つひとつの価値は高いものの,個々別々に存在するにとどまっているものも多く,これらの知見を集積,統合し,看護実践への適用が可能な状況に整理,体系化する試みは重要であると考える。
本稿では,筆者が行なった「障害をもつ乳幼児の家族の日常生活における体験」に関するメタスタディについて述べる。筆者は,自身の看護実践,研究の関心領域である「乳幼児期の障害児を育てる家族」に対する理解を深め,看護実践モデルの開発に向けて既存の知見を統合する1つの方法として,メタデータ分析という研究方法を選択し,実施した。本研究は,これまでに実施された,乳幼児期の障害児の家族に関する質的研究により得られたさまざまな知見を積み重ね,より俯瞰的な視点から解釈し直すことにより,このような家族の体験を構成している概念を明らかにし,看護実践モデルの構築をめざした試みである。分析の過程,実際について,具体的な例を示しつつ,紹介したい。
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