巻頭言
ノーマリゼーションのために
渡辺 誠介
1
1千葉県立衛生短期大学看護学科
pp.905
発行日 1985年12月10日
Published Date 1985/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552105495
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ロンドンとハンブルグで学会がありそれぞれの町で約1週間過ごした.私はポリオで両下肢麻痺があり,外国に行くときには若い先生に同行を願い車椅子を持参する.付き添いの方にはご迷惑をかけるが私自身はそう不自由を感じたことはない.新東京国際空港で車椅子用のリフトを使わせてもらったときに聞いたら,多い日には30人位利用者があり,障害者の海外旅行はもう珍しいことではなくなっている.このリフトは八代英太氏の提案によって設置されたということである.ちなみに羽田にもあるPBLというリフトのついたバスは競艇の収益による寄付で,私はこの手のギャンブルは好きではないが有り難く利用させて頂いている.また障害者の海外旅行については自分自身車椅子を使用している石坂直行氏がハンディツアーズという月刊のリーフレットをだして,障害者に情報を提供するのみならず航空会社や一般の方の理解を求めている.このように積極的に行動される人人を見るたび,忙しいという口実に紛れて何もしていない自分が恥ずかしくなる.
健康は方は気づかれないと思うけれども,車椅子で動くと道路が汚いとタイヤばかりでなくハンドリムも汚れて手や袖まで汚れてしまう.レストランでも日本のようにおしぼりをくれないし,ヨーロッパではトイレが地下のことがしばしばあるから手も洗えないままパンをちぎることもある.よくいわれる犬の排泄物には一番閉口する.ロンドンからハンブルグにきてまず気がついたのは道路が清潔なことであった.町が汚れる原因として,ロンドンやパリっ子は人種的な問題をあげるが,結果的に人種であっても経済と教育の差にあるに違いない.
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