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「看護学研究法特論セミナー」の企画と本稿のもう1つのテーマ
わが国の大学院博士課程教育は,本邦独自といわれる「論文博士」にも象徴されるように,研究と論文作成をその中心に据えている。そのため授業,講義はきわめて少なく,多くの大学院での博士課程修了要件は,学位論文を除けばわずか数単位である。一方,海外(特にアメリカ)での大学院教育は,博士前期・後期課程ともにコースワークの単位数が多く,特に研究に関する授業展開の豊富さには目を見張るものがある。文部科学省中央教育審議会の答申『新時代の大学院教育─国際的に魅力ある大学院教育の構築に向けて─』(2005年)においても,「コースワークの充実・強化」(第2章1.大学院教育の実質化)のなかで,「博士課程(後期)においては,研究者の育成を主たる目的とすることから,研究能力の育成に必要な理論構築や技術開発に関する方法論のコースワークを含んだ教育プログラムとすることが適当である」と提示されている。わが国の看護系大学院数のさらなる増加は,これまでのマンツーマン式での論文指導体制の限界とともに,新たな教育方法の確立を後押しする。より充実した研究法の修得をめざす大学院生(以下,院生)の要望に応えるためにも,学士課程,修士課程,そして博士課程へと続く学問体系ならびに教育体制の充実をめざすためにも,博士課程教育でのコースワークの充実は取り組むべき重要な課題であろう。
2005(平成17)年度,文部科学省「魅力ある大学院教育」イニシアティブ事業に採択された「看護系大学教員の博士号取得推進プログラム」の1つとして筆者らが「看護学研究法特論セミナー」を企画するにあたっては,院生からの要望を募った。「今受けたい講義は何か」という問いに,多くの院生が口を揃えて「看護学の研究法,それも近隣諸学問の研究者の講義ではなく,看護研究を実際に手がけている研究者の話を聞きたい」という声をあげた。これらをもとに企画されたのが本焦点に掲載されている8つの講義である。1コマ1コマの講義,質疑応答は期待に違わぬ充実したものであった。その詳細は後のページをご覧いただくとして,本稿では大学院教育に関するもう1つの大きなテーマ,すなわち指導側の課題を取り上げる。題して「『魅力ある大学院教育』のための看護学学位論文指導プロセスでの課題と展望」である。
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