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なぜ,方法論の講義で臨床の話をするのか?
今日は,「現象学的アプローチと臨床との接点─研究者の姿勢を中心に」というテーマでお話させていただきます。臨床の話が中心になりますので,なぜ方法論の講義で臨床の話をするのかということ,それから方法論の講義ですので,少しだけ現象学的アプローチについて話をした後,現象学的アプローチを用いる時に必要な姿勢として臨床の話と,最後に時間がある限り研究の紹介をしたいと思っております。
私は現在,埼玉県にある戸田中央総合病院という民間の総合病院で,看護カウンセリング室の室長として,患者さんやご家族,ご遺族の方の個人カウンセリングやサポートグループに携わっています。井上智子先生からこの講演の依頼を受けた時,最初はお断りしました。私は確かに博士課程で現象学的アプローチを使って研究をしましたが,今は臨床にどっぷりつかっておりまして,方法論についてより洗練させて研究を現在行なっているという立場ではありません。博士課程の皆さんに方法論の話をするだけの力量があるとは思えなかったので,「臨床の話だったらできますが,方法論の話はできないので,すみません」とお断りしました。すると井上先生が,「いや,臨床の話でいいんです」とおっしゃったのです。確かに現象学的アプローチを使って研究を行なう時の研究者の姿勢と,臨床を行なう時の臨床家や看護師としての姿勢は共通するものがありますが,「だからといって方法論の講義で臨床の話をしていいんでしょうか」とまたお断りしました。それでも井上先生は熱心にまたお返事をくださいました。院生の方たちは今,質的研究を選ぶ方がとても多いそうですね。ただ,「インタビューとか参与観察とか,そういうところでつまずくことが多くて,それは臨床にいた時にどれだけ患者さんに向き合えたかということも影響しているのではないか,だからこそ臨床の話をしてください」と井上先生に説得され,今日この場に立っています。
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