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看護学教育における研究の視点
看護学の大学教育化が急速に進むなかで,多くの大学が独自の教育理念を掲げ,その理念を実現させるためのさまざまな教育モデルの提案と,その成果を評価する研究がみられはじめている。看護学教育における研究は,実践のなかから生み出された成果を分析し,さらによい教育方法への改善に導く鍵を得ることが目的である。つまり,教育理念の実現に向けた具体的な教育方法の創造・提案,そして実施した際の教育効果の評価・検討がなされ,その結果蓄積された研究成果が,学問としての体系化へと繋がる。しかし,現状の看護学教育研究をみると,教育する側の哲学を反映した理念や,その実現のために練られた創造的・具体的な方法論,およびその分析・評価研究方法論においてさえもいまだ十分でない。
看護学教育研究は,まずは,教育者自身が,どのような理念を背景に,次代に向けた看護学教育の新しいデザインを描くかが最も重要である。その教育方法の緻密な準備と期待される教育効果の評価なくして,どんなに沢山のデータを学生たちから収集したとしても,その研究的な営みが実践に還元されているとはいいがたい。このことについては,日本看護学教育学会の研究委員会において行なった,当該学会の過去の発表内容を分析した結果からも明白であり(川口ら,2006;雄西ら,2006),ここでは今後の看護学教育のための研究のあり方の大きな課題が指摘されている。
本稿では,筑波大学での看護学教育において,技術教育のスタート点に立つ看護の基本技術の学習のために必要とされる導入教育について,筆者らが行なった授業展開の実際と該当科目である「生活援助論演習」の授業展開の工夫を具体的に紹介する。
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