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はじめに
最近,心理学や社会福祉の領域でもGrounded Theoryを用いた研究が多くなり,看護学においては,研究の方法論として木下康仁氏の修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチModified Grounded Theory Approach(以下,修正版M-GTAとする)が論文に登場することが多くなった。こうした流れを受け,本号焦点の企画は修正版M-GTAに関する議論と理解を深めることが意図されている。しかしこの議論は,単に修正版M-GTAにとどまらず,その理論的背景であるGrounded Theoryや,Grounded Theory Approach〔以下,GTもしくはGTAという意味でGT(A)とする〕そのものに関する理解や議論をも深めることを視野に入れていると考えたい。
これまでGT(A)で書かれた論文は,他の論文同様,論文として紹介されるのみであった。しかし本企画のように査読の過程が公開されると,査読者と研究者のやりとりを通して,より詳細に分析方法の論拠や概念の集積過程が明らかにされる。また誌面上ではあまり書かれることが少ない,本当の意味での「今後の研究課題」等もみえてくると,そのテーマにおける本来の研究過程の,どのあたりの段階に位置する研究論文であるかということがより明確になる。このようなやりとりは,これから研究を進めていかなければならない人たちはいうに及ばず,手探りで研究活動を続けてきた人たちにとっても,多くの知的刺激を与えることであろう。今回査読過程の公開を受けて下さったお二人に対しては,修士論文という限られた期間の研究において,それぞれの思考のプロセスをきちんと述べられるような取り組みをしてこられたことに,まず敬意を表したいと思う。
このような企画のなかで筆者に与えられた課題は,これまで修正版M-GTA以外の方法でGT研究を行なってきた立場から,2本の論文に関する所感を述べることを通して,筆者が修正版M-GTAの特徴と考えている点や,理論的背景であるGTやGTAについて言及することであると捉えている。
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