焦点 Grounded Theory Approach
解説
Grounded Theoryの理解のために
木下 康仁
1
1(財)日本老人福祉財団老年学研究室
pp.250-267
発行日 1990年7月15日
Published Date 1990/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1681900252
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はじめに
Grounded Theoryの名で今日広く知られている知的提言は,社会学のみならず,社会科学,健康科学などの領域において画期的なものである。しかもそれのみならず,現時点で考えれば,Grounded Theoryは,おそらくその提唱者であったGlaserとStraussという2人の社会学者の予想を越えた形で,それ独自の意味をもちつつあるように思われる。すなわちGrounded Theoryは,研究のあり方と進め方に関して,重要な指針の役割を果たしてきているのであり,その広がりは,ひとり研究の世界の中だけのことではなく,社会性をもった運動になりつつある。言うなれば,Grounded Theory現象とでも呼ぶべき新しい研究の流れが,アメリカや日本だけでなく,ヨーロッパの国々においても始まっているのである。そして筆者は,Grounded Theoryを標語とするこうした新しい研究活動が,現在の時代の要請に応えるものであること,また,その動きの中から人間性と社会性の豊かな科学と研究の新しいパラダイムが生成されるであろうということ,さらに,それが歴史的な価値をもちうるものであることを,確信している1人である。
周知のように,Grounded Theoryが高らかに謳いあげられたのは,1967年に刊行されたThe Discovery of Grounded Theoryにおいてであった。
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