連載 多様性があたりまえの未来へ 国内最大規模のLGBTs調査結果から・9【最終回】
医療機関に求められる性的指向・性自認・性別表現に関わる取り組み
日高 庸晴
1
1宝塚大学看護学部
pp.320-327
発行日 2022年6月25日
Published Date 2022/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665202020
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
医療界における性的指向と性自認の取り扱い
1987年に米国精神医学会の発行によるDSM-Ⅲ-R(精神障害の診断と統計の手引き 第3版改訂版)から「同性愛」が完全に削除され,1992年発行のICD-10(国際疾病分類 第10版)で「いかなる意味でも治療(異性愛へ転向させる治療の必要性という意味において)の対象とはならない」とされ,同性愛脱精神医療化された。しかしながら,この間にも米国では,性的指向を「矯正」することを目的としたカウンセリングや電気ショックといったコンバージョンセラピー(異性愛者への転向療法)実施の報告がある。わが国におけるその実態は明確になっていないが,筆者の研究活動中に寄せられた声として,精神科医による嫌悪療法*1の面接があったというゲイ男性からの証言がある。それは,嫌いなものの写真と好きな人の写真を交互に見続けるというものであったという。
「性同一性障害」はDSM-5(精神障害の診断と統計の手引き 第5版)から「性別違和」へ病名が変更され,2022年1月からわが国でも適用されているICD-11(国際疾病分類 第11版)では,「精神・行動・神経発達障害」に分類されていた「性同一性障害(gender identity disorder)」は精神疾患の範疇から除外され,「性の健康に関する状態」に「性別不合(gender incongruence)」として新たに追記された。ICD-11において精神疾患でも身体疾患でもない分類として記載されたことにより,「性同一性障害」は脱精神医療化されたと考えられている。
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.