連載 NIPTと優生思想をめぐって・2
無侵襲的出生前遺伝学的検査(NIPT)とは—後編
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学
pp.408-413
発行日 2019年5月25日
Published Date 2019/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665201268
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NIPTコンソーシアムへの公開質問状とその経緯
コンソーシアム(consortium)とは「共同事業体」と訳されているごとく,ある目的に沿って活動する2つ以上の個人やグループからなる団体のことである。わが国のNIPTコンソーシアムは,この画期的な出生前診断技術であるNIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)が,倫理的規範の乏しい日本に導入されることがきっかけで,引き起こされかねない問題を懸念した,周産期医療に携わる3人の産婦人科医師が立ち上げたものである。前編で述べたごとく,幸いにも日本産科婦人科学会を中心としたいくつかの関連学術団体によって極めてレベルの高い倫理規定が作成され,学会が認定した施設において実施するという縛りの下に臨床研究という形でスタートしたが,その活動の中心がNIPTコンソーシアムであった。
筆者は周産期医療および生命倫理に携わってきたことから,わが国で展開されているNIPTを用いた出生前診断の現場に一抹の不安を感じ,同様な思いを持っていた周産期医療に関わる医師仲間と,以下のような公開質問状をNIPTコンソーシアムに提出した。それは,コンソーシアムを立ち上げた医師たちの「急がなければ」という危機感を理解しながらも,十分な倫理的配慮がなされないままの見切り発車の感が否めなかったからである。NIPTコンソーシアムは真摯にそれを受けて,文面による回答と公開シンポジウムなどの対応を行った。その経緯の一部を以下に参考として提示する。
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