トピックス
シーラ・キッツィンガーさんを偲んで
菊地 栄
1,2
1出産育児環境研究会
2立教大学
pp.672-673
発行日 2015年8月25日
Published Date 2015/8/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665200274
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イギリス郊外に広がるのどかな田園風景は,子どもの頃に読んだケネス・グレーアムの『たのしい川べ』の川や森を思い出させる。車窓からは,ポプラ並木が丘陵地帯に幾何学模様をつくり,その合間で草をはむ牛たちが見える。オックスフォードの田舎町に立ち並ぶ家々は,何百年の歳月,何も変わらずにそこにたたずんでいるかのように見えた。小さな集落の片隅に,広い敷地の落ち着いた邸宅がある。マナー・ハウスと呼ばれるその邸宅は元荘園領主の家で,築500年をとうに超えていた。その重厚なドアを開けて出迎えてくれたのが,シーラ・キッツィンガーさんだった。
私は幸運にも,その邸宅を3回訪れている。最初は1987年のインターナショナルホームバース会議でのワークショップ。二度目は1994年に高橋ゴールドマン浩美さんと,「いいお産の日」のゲストとして近々来日する予定の彼女にインタビューをした時*1。三度目は拙著『イブの出産,アダムの誕生』(農山漁村文化協会,1998年)のインタビューをするために1997年にうかがった。その度に彼女は,熱く香り高いミルクティーをポットにたっぷり入れてふるまってくれた。
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