今月の話題
私たちが「シーラおばさんの妊娠と出産の本」を訳した理由
戸田 律子
,
岡本 千草
1
,
菅沼 ひろ子
2
1渋谷区保健所
2常磐大学大学院
pp.428-431
発行日 1995年5月25日
Published Date 1995/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611903380
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熱い思いの込められた本
このたび縁あって,『シーラおばさんの妊娠と出産の本(原題The New Pregnancy and Childbirth)』の邦訳者のひとりに加えていただいた。イギリスで初めて原書を読み終えた時の感触は,新しいイラストや写真も加わった改訂版を手にした10数年後のいまも変わらない。熱い思いが伝わってくる。著者のシーラ・キッツィンガー氏はもちろんのこと,翻訳メンバーは出産に特別な思いを寄せる女性たちだった。文化の違い,経験や価値観の相違を越えて共通するお産の本質についての予感とも言えるものが,この共同作業を通して訳者間と著者,そして著者を通して世界の女性たちと分かちあえたような気がしている。
著者のキッツィンガー氏は,イギリスのオックスフォード大学で社会人類学を学び,その分野で大学の教鞭をとった学者である。先進諸国ばかりではなく,古今東西のお産を人類学者の目で実地調査をした。1958年から独自に編み出した出産準備クラスを運営し,オックスフォードの地の利を生かして,多くの産科医,助産婦の協力を得ながら,出産の本来の姿を取り戻そうと世界を舞台に研究,講演,執筆活動を進めている。日本には3回来日。著書は20冊以上にのぼり,世界30余か国の人々に読み親しまれている。なかでも本書は代表作として知られ,ミリオンセラーとなった。
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