昨日の患者
娘を偲ぶ
中川 国利
1
1仙台赤十字病院外科
pp.216
発行日 2009年2月20日
Published Date 2009/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407102472
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- 文献概要
嬉しいこと悲しいこと,様々な経験を積み重ねて人生は形成される.楽しい思い出だけで人生を過ごせれば最高の幸せであるが,ときに悶えるような辛いこともある.最も耐えがたい悲しいことは,やはり身近な人との別れだと思う.年長者である祖父母の死に接し,そして両親を見送り,最後に自分自身が子供や孫に看取られるのが世の常である.しかし,見送られる順番が異なると,残された遺族の悲しみは増す.
Iさんは集団検診での便潜血反応陽性を契機に大腸癌が発見され,手術を目的に紹介されてきた.いつものように手術の必要性を説明し,術前検査を受けることを勧めた.しかし,Iさんは早期に手術することを躊躇し,1か月半ほどの猶予を願い出た.癌のために手術が必要だと説明すると,少しでも早期の手術を望むのが常である.
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