連載 スクリーンのなかの助産師 出産シーンあれこれ・5
黒澤明監督の医師3部作
渡辺 俊雄
pp.420-421
発行日 2015年5月25日
Published Date 2015/5/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665200204
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以前,わが「衛星映画劇場」(現・プレミアムシネマ,BS放送)で“世界のクロサワ”こと黒澤明監督の遺した名作30本を全部放送するという企画があり,1本1本ていねいに盟友・山本晋也監督と共に解説したことがあったが,その番組のなかで,医学を志す若い諸君が見ておくべき「医師3部作」というのを提言した。すなわち「酔いどれ天使」(1948),「静かなる決闘」(1949),「赤ひげ」(1965)の3作である。この3本の映画には,医療に携わる者として果たすべき義務,倫理,理想が見事に描かれているからである。
「酔いどれ天使」では,志村喬が戦後の混乱期,貧しい人々を診療する飲んべえではあるが腕のいいヒューマンな医師に扮し,自暴自棄になりがちな闇市の若いヤクザ(三船敏郎)の肺結核を必死で治療する。この医師のモデルとなったのは,黒澤監督が製作前の取材で出会った,横浜の産婦人科医だという。
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