連載 周産期の生命倫理をめぐる旅 あたたかい心を求めて・13
出生前診断のもたらす倫理的問題(Ⅲ)
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学
pp.68-71
発行日 2014年1月25日
Published Date 2014/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102693
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出生前診断の対象と検査の時期をめぐる倫理的問題
出生前診断には,妊娠早期に行なうスクリーニングとその後の確定診断があることはすでに述べた。胎児異常を早期に診断することは横隔膜ヘルニアのようによりよい医学的対応を可能とする意義がある。また致死的異常が診断された場合に,母体保護法で人工妊娠中絶が可能である妊娠満22週以前に診断される必要がある。
すべての妊娠において早期からスクリーニングとして出生前診断を行なうことは,異常の児を早期診断するメリットがある一方,予期せぬ重篤とはいえない異常が見つかった時の母親への精神的負担というマイナスの面も考慮しなければならない。早期に出生前診断されると,「健康な児を産みたい(裏返せば異常児は産まない)」という優生思想により,十分臨床的に対応可能な事例が選別され中絶される危険を孕んでいる。
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