連載 周産期の生命倫理をめぐる旅 あたたかい心を求めて・11
出生前診断のもたらす倫理的問題(Ⅰ)
仁志田 博司
1
1東京女子医科大学
pp.978-983
発行日 2013年11月25日
Published Date 2013/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102639
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はじめに
超音波検査を含めた画像診断およびDNA検査の進歩により,生まれてくるまでは子どもの性別さえわからなかった時代から,生まれてくる子どもの疾患の約8割が出生前に診断可能な時代となっている。
その診断の多くは,妊娠早期から診断されることによって,よい医学的管理を可能にするという意味があるが,生まれてくる子どもの病気が治療困難であったり予後が極めて重篤である場合に,どのように対応するかという倫理的問題が生じてくる。私と共に早稲田大学木村利人教授門下生であった生命倫理学者の河原直人は,「出生前診断をめぐる倫理的考察と議論こそ,生命倫理の真髄にかかわるものである」と述べている。
本稿では,出生前診断の医学的観点からのメリットや問題点にはあまり触れず,それがもたらす倫理的面について一緒に考えてみよう。特に臨床上議論の的となっている,通常の妊婦健診で行なわれている超音波検査の時に偶発的に見つかった胎児の異常の取り扱いと,近年わが国にも導入された母体血を用いた染色体異常スクリーニングの倫理的問題を解説する。
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