Current Focus
ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)感染と母乳
森内 昌子
1
,
森内 浩幸
1
1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科感染病態制御学
pp.162-167
発行日 2012年2月25日
Published Date 2012/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665102113
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ヒトT細胞白血病ウイルスI型(以下,HTLV-I)は,成人T細胞白血病(ATL)やHTLV関連脊髄症(HAM)を引き起こすが,特に前者は約5%のキャリアに発症する極めて予後不良の疾患である。キャリアの発症を阻止する手段(二次予防)が知られていない現時点では,ウイルス感染の予防(一次予防)が最善策で,それには母乳遮断による母子感染防止が求められる。しかし,母乳が有するさまざまなメリットと断乳の効果が絶対的なものではないことを考慮すると,断乳を押し付けるような対応は適切ではなく,デリケートな配慮が必要である。
そのような状況の中,これまで流行地の一部でしか行なわれていなかった妊婦のHTLV-I抗体検査は,日本産科婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン―産科編2011」において推奨レベルA(強く推奨される)に格上げされ,また2011年度から全国的に公費補助の元で行なわれることになった。そのため,HTLV-I感染とその検査法,臨床的意義,予防法についての正しい知識を持って母子感染を防ぐとともに,キャリアへのカウンセリング体制を整えなければならない。
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