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母乳によるHTLV-I母児感染説の現状
日野 茂男
1
1長崎大学医学部・細菌学教室
pp.1990-1996
発行日 1986年11月10日
Published Date 1986/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402220623
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ATLLとは?
ATL(成人T細胞白血病)は,主に40歳以上の成人に見るTリンパ細胞の白血病で1976年高月らが特異な細胞形態を指標として発見した.その後,T細胞リンパ腫の形をとるものがあることが確認され,併せてATLL(成人T細胞白血病・リンパ腫:Adult T-cell leukemia/lymphoma)と呼ばれる.ATLLの患者のほぼ全員が,1980年に米国のGalloらの報告したHTLV-I(Human T-lymphotropic virus type-I)に感染していることが判明し,HTLV-IはATLLの原因ウイルスとされた.
HTLV-Iは主に九州地方に強い地域内流行を示すため,流行地を除けばATLL自体も稀な地方病といって良い.しかし流行地である長崎県をとって見ると,年間死亡者は数十人で全体の約0.5%を占め,単一の病原体による死因では重要級である.ATLLがほぼ100%致命的であり家族内集積性を示すことからも,HTLV-I感染経路を明らかにし,感染防御を計ることは流行地にとって重要な課題である.
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