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連載 海外の文献から・8
ヒトT細胞指向性ウイルスI型(HTLV-1)感染症
Virus diseases-Human T-cell lymphotropic virus-1 (HTLV-1)
城川 美佳
1
1東邦大学医学部公衆衛生学教室
pp.1038-1039
発行日 1992年11月10日
Published Date 1992/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662900621
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- Abstract 文献概要
HTLV-1は,なじみがないかも知れないが,我々日本人には特に関係の深いウイルスである。まず,このウイルスは,成人T細胞白血病(ATL)の病原体として1981年に日本人研究者,日沼頼夫京都大学名誉教授らによって発見されたヒト・レトロウイルスである。同じ種類のウイルスとしては,今世界中で大きな問題となっているHIVがある。HIVは,ご存じの通りAIDSの病原ウイルスであり,やはりTリンパ球の感染が原因でAIDSを発症する。
ATLは,日本では九州地方を中心に患者の多い白血病の1つで,感染後約50年間の潜伏期の後に発症する予後の悪い疾患である。日本は世界的に見ても大きな流行地であり,キャリア(無発症感染者)も非常に多い。日本以外の流行地域としてはカリブ海沿岸,メラネシア諸島があるが,以前はそれ以外の地域においてはほとんど感染者の見られない,いわゆる「風土病」的な疾患であった。ところが,最近になってその状況が変わってきているのである。
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