特集 癌の臨床検査
I 癌そのものをとらえる検査
1 ウイルスに関する検査
B.癌関連ウイルス 1)成人T細胞白血病ウイルス(HTLV-I)
田中 篤
1,2
Atsushi TANAKA
1,2
1前・京都大学ウイルス研究所
2現・新潟大学医学部小児科学教室
pp.1259-1262
発行日 1989年10月30日
Published Date 1989/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917593
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はじめに
成人T細胞白血病(ATL)は,日本の西南地方に偏在し,特有の臨床症状を呈する白血病,リンパ腫として1977年にその臨床概念が発表された1).その後1981年に,日沼らによってその病因ウイルスの存在が明らかにされ2),その遺伝子解析がなされた結果3),1980年にPoiezらによりヒトのT細胞白血病の培養株から発見され報告されていたもの4)と同一のレトロウイルスであることが判明し,現在,ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)と呼ばれている.ATLはヒトの白血病の中で,その発症にウイルスが関与することが明らかにされた最初の例であり,このHTLV-Iの関与のしかたを解明することは,ヒトの発癌機構の解明に直結することであり,また癌の予防,診断,治療に対してより具体的な道を拓く,実際に拓きつつあるものと期待されている.
ここではまずHTLV-Iのウイルスそのものに関する知見,癌への関与のしかたに関する知見をまず述べ,次いで,このウイルス感染の検査法について概略し,最後にウイルス感染陽性という事実を発癌性という観点からどうとらえ,対処したらよいのかを考えてみたい.
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