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はじめに
母乳の利点は,成分に関する調査やさまざまな研究などから言われてきている。加えて,母乳育児についても,近年行なわれている疫学調査において,母児に対する健康上だけではなく精神上の利点も明らかにされてきている。
厚生労働省の国民運動計画である「健やか親子21」では,2010年までの取り組みの目標として「出産後1か月時の母乳育児の割合を2000年の44.8%から増加させること」と具体的に掲げている。また,『授乳・離乳の支援ガイド』1)は,授乳を支援することから,健やかな子どもを育てることをめざして策定されており,授乳や離乳への支援やケアのポイントを示している。
しかしながら,現代の母親たちは,核家族で育ち,親や兄弟姉妹および地域との関係も希薄な傾向にある。身近に育児経験者がないなかで出産を迎え,産後においても困ったときのサポートをどのように得られるかわからないため,子育てに不安をつのらせストレスを感じながら育児をしている母親は増加してきている。2000年度の幼児健康調査2)によると,子育てに自信が持てない母親の割合は27%で,これは4人に1人の母親が子育てに自信が持てないことを示している。特に,出産後は早期から母乳育児について困難感や不安感を表出する。
このような現状のなか,病院施設においては助産師外来や病院内助産院の開設,さらに妊娠中から退院後の連続した流れのなかで,分娩から育児支援まで,担当の助産師が継続的にケアを提供するプライマリーケアの導入が試みられている。そこでは,助産師がドゥーラの役割を担い,妊娠,出産,育児を行なう女性を身体的・精神的・社会的にともに支え合っていく取り組みがなされてきている報告も見受けられるが,いまだごく一部である。
厚生労働省が毎年行なっている,「2006年度21世紀出生児縦断調査」3)において,育児中の母親たちが子育てに関する相談を誰にしているか,という質問で最も多かったのは「配偶者」で,次いで「友人」「知人」「実母」の順で,看護師,助産師という回答は全16項目中最下位であった。この調査から,妊娠,出産,産後入院期間での母児と助産師とのかかわりは希薄で,かつ継続されておらず,退院後の助産師の存在は生かされていないことが明らかとなった。
このような状況のなか,大阪赤十字病院(以下,当院)8A病棟(産婦人科病棟)では,退院後,母親の育児全般の不安や母乳育児に不安を持っている母親に対して助産師が不安を解消し,育児支援を行なっていく取り組みとして,母乳外来とアフターケアを行なっている。当院の母乳外来は1992年から行なわれているが,以前は分娩室と産褥入院の病棟が別ユニットであったため,母乳外来は分娩室の助産師が担当であった。
その後,分娩室も含めて産科病棟となったが,母乳外来の曜日や時間設定,ケア体制に規定はなく,分娩がなければ受け入れるという不特定なケアであった。そのため,2008年3月より母乳外来実施にあたっては規定を定めてケアを行なった。アフターケアは2006年から実施していたが,2008年よりケアの基準を定めて有料化した。今回は,これらの取り組みを報告する。
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