連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・59
赤ちゃんが命懸けで伝える母子の絆
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.176-177
発行日 2009年2月25日
Published Date 2009/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101385
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お産を通じて母親は自らの存在を捉えなおす
お産は女性の人生のなかで大きなターニングポイントだ。赤ちゃんが命を懸けて教えてくれることに気がつき,考え始めた女性がいる。
イリンは20歳の初産婦,彼女自身が闇中絶された子どもだった。過去に,イリンと同じような闇中絶で片目や手がないといった奇形がある産婦のお産にかかわった。どのお産も大変だった記憶がある。胎児にとって無条件の信頼を寄せる母親,その母親から存在を否定された傷を持つ彼女たちのお産が困難になるのはわからないでもない。イリンも母親について尋ねただけで「母親? あんなやつ知らない!」と憎しみをあらわにした。このお産は何かあるに違いない,そういう予感がした。
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