連載 とらうべ
乳幼児期の母子の絆
服部 祥子
1
1大阪教育大学
pp.819
発行日 1990年10月25日
Published Date 1990/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611900180
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仕事をもつ女性が増えている現在,「女性の自立と子育て」は重要なテーマである。古い固定観念で女性を家庭に縛り,子育てをせねばならないとする制約に対し,女性の社会進出や個として生きる自由を力強く推進する動きは,今や国際的潮流である。私も仕事をもつ身であり,その意義を否定はしないが,子育てがあるために女性の自立が阻まれるという社会的力学とは別の次元で,このテーマを追求しようと思っている。つまり精神医学的立場から,子どもの精神発達や人格形成における母子関係を中心課題に据え,「女性であり人間であること」と「母であること」のジレンマに目を向けているのである。
ボウルビィはmaternal deprivation(母性剥奪)という概念を1951年に提起した。人生早期に母と別れることは,乳児が最も必要としている舜性的養育を奪い取られることになり,子どもの精神的健康が損なわれる危険性があるという指摘である。つまり母が家庭に居て子どもの養育にとりくむべきという示唆でもある。
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