連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・5
母親を求めた赤ちゃん
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.742-743
発行日 2004年8月1日
Published Date 2004/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100806
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マリロのお産
夜中の11時,18歳の初産婦マリロの声が診療所に響く。いい陣痛が来ている,額や肩に汗が浮かんでいる。「アライーアライーコー(=痛い)」と叫び声があがる。
私のところでお産する人の約7割が健診に一度も来ていない飛び込みの人たちだ。このマリロとも初対面だ。陣痛の合間に最低限度の問診を済ませる。「夫は今どこにいるの?」との問いに早口で彼女が答えた。聞き取れなかった私は相棒のティナに「なんて言ったの」と尋ねた。ティナは言いにくそうに「いないって……」と答えた。簡単に結婚をしてしまい,妊娠中にパートナーと喧嘩してすぐ別れてしまう人が結構多い。彼女もそのような1人だろうとたいして気にも留めなかった。
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