連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・47
大暴れのお産が続く日々
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.180-181
発行日 2008年2月25日
Published Date 2008/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101175
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「ヒュー!ヒュー!!すごいダンスだね,コンテストに出たほうがいいよ!」。私は大声で笑いながら,産婦の危険な動きを茶化した。
踊っても生まれないよ!
深夜に呼び出されてクリニックへ行くと,まさにもうすぐ生まれるという産婦が腰を思い切り上げ,いやいやをするように腰をすばやく振っていた。
ティナの手が何度も左右に動く産婦の膝に強打されるその横で,産婦の家族が2人で1本の足を押さえ込もうとしている。でもこれも振り払われている。動きを抑制できない焦りからか,産婦の家族もティナも産婦自身も怒鳴り合うすさまじい光景だ。パニックに陥っている産婦はティナの肛門保護の腕に爪を立ててかみ付こうとしているし,とにかく場の雰囲気を変えないと危険だと思った私は大きな声で笑ったのだ。そして呆れた口調で「踊っても生まれないよ。早く終わらせたいなら,お尻降ろさないと,ね」と半分逆立ちになりつつある体勢の産婦に解決策を提示した。今までおそらく「これじゃだめ,こうしなさい」と言われていた産婦は,場違いなテンポの言葉に振り乱していた頭を止めて,こちらを見つめた。
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