連載 筆から想いは広がって・9
いざ,奥へ!
乾 千恵
pp.1078-1079
発行日 2007年12月25日
Published Date 2007/12/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665101135
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ほら。洞穴。洞窟。こう聞くだけでドキドキわくわくしてくるのは,どうしてだろう?
昔から親しんできた本のなかの冒険物語の楽しさや,何か神秘的なものが隠されているかも知れないという思いが,俄かにかき立てられるためだろう。「海賊の宝さがし」という言葉がまず浮かんでくるし,イギリスのアーサー王伝説では,物語の最後で深手を負い,小舟で運ばれていったアーサー王は,どこかの洞窟で,自分が呼ばれるときを待ちながら眠っていると言われている。フランス南部の,「聖地」とされるルルドの泉も,お告げのあった洞窟の地面から湧き出している。トーベ・ヤンソンのムーミン童話にも,スニフが「ひみつのどうくつ」を見つけ,「誰にも教えてやらないぞ,自分だけの宝物を持ってきて,ここに隠すんだ」と,秘かな喜びに浸る場面があって,つくづく「うらやましい!」と思ったものだ。
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