コーヒーブレイク
臨床検査・奥の細道
屋形 稔
1
1新潟大学
pp.505
発行日 2001年5月15日
Published Date 2001/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904762
- 有料閲覧
- 文献概要
昨年の暮れから春にかけて新潟は久方ぶりの大雪に見舞われた.暖冬予報とか地球温暖化などはどこへ吹っとんだかと思われる寒気と雪のダブルパンチであった.そのはしりの晦日に凍てついた道で車を避けるはずみに転倒し右のくるぶしを骨折した.それから生まれて初めて1か月余をギプスをはめられたベッド生活を強いられた.
痛みとか歩行不能はともかく自由を束縛されるのは思ったより苦しいものである.そして時間だけが過ぎてゆく.論語の中の"逝くものはかくの如きか昼夜を舎(お)かず"という一節を思い出し,深々たる雪とともにものの過ぎてゆく気配に耳をすませる生活であった.今迄も何遍読んだかわからないが藤沢周平の小説に片っ端から読みふけった.いい加減な文章は一つもなく静かに心にしみ入る物語ばかりで,自らは弱者の文学といっているが芯の強い,人に癒しを与えられる作家であることを再認識し,退屈しなかった.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.