特集 ミミッカー症例からいかに学ぶか
各論:思い出のミミッカー症例
真っ黒な壁のその奥に……
矢吹 拓
1
1国立病院機構栃木医療センター内科
キーワード:
褥瘡
,
細菌性髄膜炎
,
アンカリング
,
確証バイアス
Keyword:
褥瘡
,
細菌性髄膜炎
,
アンカリング
,
確証バイアス
pp.1604-1607
発行日 2023年9月10日
Published Date 2023/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402229121
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暫定診断が想起されるまで
症例 92歳男性
Alzheimer型認知症があり5年ほど前から寝たきり状態で,長男の嫁が自宅で介護している要介護5の超高齢男性.2年ほど前から誤嚥性肺炎による入退院を繰り返すようになり,1年前に肺炎で入院した際に経口摂取ができなくなった.認知症のため本人の明確な意向は確認できなかったが,人工栄養について家族と相談し胃瘻を造設して経管栄養を行うことを選択された.介護体制を整えて退院して自宅療養を継続したところ,半年ほど前に仙骨部に褥瘡が発生した.ドレッシング材や軟膏による創処置,除圧を行ったが,排泄物汚染などから徐々に悪化し,黒色壊死を伴う状態となった.自宅では壊死組織の外科的デブリードマンが困難であり,1週間前から発熱を認めるようになった.褥瘡周囲の発赤があったことから,褥瘡感染の疑いで抗菌薬が開始された.しかし,その後も発熱が遷延し,仙骨部褥瘡および褥瘡感染に対する入院治療が必要と判断され,総合病院皮膚科に紹介受診となった.
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