特集 妊娠と放射線
産婦人科医師からみた「放射線と胎児」
谷口 一郎
1
1大分県立病院
pp.970-973
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100854
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はじめに
筆者が産婦人科医となった昭和40年代においては,超音波は臨床の場にはまったく登場していなかった。その当時,多胎,骨盤位,胎児奇形の最終診断にはX線撮影が必須であった。また,結核患者が多かった時代のなごりで,妊娠と診断されると必ず胸部X線撮影を施行し,母子健康手帳にその旨を記入することが義務化されていた。前置胎盤の診断において膀胱に造影剤を注入して撮影し,児頭と膀胱との距離を測定してその診断らしきものをやっていた。産婦人科においては,昭和50年代に入り画像診断としてのX線写真は超音波に取って代わられた。近年においては非侵襲的な超音波とMRIを駆使することによりほとんどの場合,臨床にとって十分な情報を得ることが可能となった。
しかし,CPD(児頭骨盤不均衡)を診断する場合のX線骨盤計測や外科や泌尿器科系の急性疾患が妊娠中に疑われた場合,また癌が疑われた場合にはX線やCTがその確定診断になくてはならないという局面にも遭遇する。そのような事態に直面した場合における,リスクとベネフィットについて言及してみたい。
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