特集 妊娠と放射線
放射線とは何か―正しい理解のために
青山 喬
1
1滋賀医科大学
pp.939-946
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100849
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放射線とは何か
放射線というものは,われわれの五感に感じないため,理解することがなかなか難しいと思います。しかし,実際は非常に身近にある重要な存在です。と言う訳は,放射線は物質とともにわれわれが存在している宇宙の構成成分であるからです。つまり,宇宙は物質と放射線でできているのです。物質は原子や分子からできています。原子や分子は,さらに微細な粒子(電子や原子核を構成している陽子,中性子など)が互いに引力(核力やクーロン力)で結びついて集団を形成している状態です。
一方,微細な粒子が集団を作らずに,大きい運動エネルギーをもって,物質の中を走っている状態のものがあります。これが放射線と言われるものの中で,粒子線と言われるものです。また,微細粒子のうちで電荷をもっている粒子が運動状態を急に変化するときや,微細粒子の集団である原子核が崩壊するとき,励起状態になった原子核が安定しようとして,エネルギーを波状に変動する電場や磁場として放出します。これが放射線の中の電磁波と言われるものです。電磁波には,電波や可視光線,紫外線などが含まれますが,エネルギーが大きく,波長が短くなるほど,波の性質を失って,粒子の性質が強く現れ,X線,γ線は光子と呼ばれることがあります。
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