連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・7
生きるために不可欠な愛
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.918-919
発行日 2004年10月1日
Published Date 2004/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100843
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育てられない理由
「この子は私の妹よ。だから私が育てる!」
過期産(妊娠12か月)のため,お産にならず,クリニックから病院に搬送した知恵遅れのある産婦リータの長女のメイ(5歳)は,帝王切開で生まれたばかりの妹を抱きながら言った。しかし,この小さな妹はもうすぐ里親が引き取りに来るのだ。母親には責任を持って育児ができないだろう,経済的にも難しい――こんな理由から,周囲は赤ん坊を里子に出すことに決めていた。それを悟ったメイは私に最後の望みをかけて,「家族は一緒にいるのが当たり前でしょう? それが幸せでしょ?」と全身で問いかけている。大人の理屈は通用しない一途な願い。家族は一緒にいるのが幸せ,そんな当たり前のことを改めて考えさせられているショック。私は何もできないことを詫びるようにメイを抱きしめていた。
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