特集 知らないではすまされない不妊治療
不妊治療には良きチームが不可欠
森本 義晴
1
1IVF大阪クリニック
pp.223-228
発行日 1999年3月25日
Published Date 1999/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902129
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広く深くなった近年の不妊医学
英国ケンブリッジ郊外のボーンホールクリニックは広大な敷地の中にある。昔の貴族の館を病院に使用しているのだが,中へ入るとかなりの近代的不妊治療病院だ。その広大な敷地の片隅に墓地があって,世界で初めて体外受精児を誕生させたパトリック・ステプトー博士が眠っている。先日,久しぶりに当地を訪れる機会があり早速行ってみた。古い記憶をたどっていくと苔むした先生の墓標を確認できた。
考えてみると,18年前,ステプトー先生が体外受精を実施したときのシステムは現在のそれに比べるとかなりシンプルなものであった。たとえば,卵巣を刺激して卵子を作る方法などもなく,自然にできた卵子を使用するのみであった。それがクロミッドを用いる簡単な卵巣刺激法からFSH(Follicle Stimulating Hormone)やHMG(Human Menopausal Gonadotoropin)を用いる過排卵刺激法へと発展した。さらに,われわれ専門医が待ちに待ったGnRHa(Gonadotropin Releasing Hormone agonist)の登場により,卵巣刺激法はほぼ完全にコントロール可能な段階に入った。つまり,この方法はLH-RH(Luteinizing hormone-releasing hormone)などの自分のホルモン系をすべて抑圧した上で必要なホルモンを補充していくという画期的卵巣刺激法だ。
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