特集 育児グループへの支援と助産師のかかわり
子育てグループと専門職の距離感―ソーシャルワークの視点から
石川 到覚
1
1大正大学人間学部
pp.605-609
発行日 2004年7月1日
Published Date 2004/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100778
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
わが国の助産師は,1世紀を越える歴史を有したヒューマンサービス専門職であり,女性の妊娠・出産や育児に対して専門的な知識に基づき,母子やその家庭のニーズに即した安全で快適なケアの提供を続けてきた。その間,多くの実績を積み上げてきたことに対して,まず敬意を表したい。近年のわが国は少子高齢化が急速に進行し,その対応策が図られても少子化に歯止めがかからない。まさに女性が人間を産み育てるという尊厳ある生の過程に寄り添う助産師への社会的な期待は,今後ますます高まってくるであろう。
助産師と同様に,ヒューマンサービス領域を担うソーシャルワーカーも,そうした状況下における社会保障の構造改革が進むなかで,保健福祉サービスを提供する場面では,援助する者から受ける者へといった対峙・上下関係にあった直線的な発想から,パラダイムの転換を求められているところである。これまでもソーシャルワークの関心として,サービスの提供者と利用者とが対等に応答し合う支援関係を目指してきた。
超少子高齢社会に対応する政策・制度用語の多くが「支援」に呼称を変更してきたが,サービス利用者と専門職との関係性(距離感を含め)は専門職による指導論の枠内で議論が重ねられている。その過程に利用者(当事者)が加わる場面が少なく,専門職の間でのみ論争を重ねることに疑念を持つものである。
本稿は,ソーシャルワークの視点から,人を産み育む過程に寄り添う助産師へのメッセージを求められたものであり,子育てグループと専門職との関係性について,助産という専門領域に初めて試論を寄せるものでもある。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.