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はじめに
セルフヘルプグループ(Self-help Group;以下SHGと記す)は脱・専門職至上主義を標榜する組織体であるから,専門職の援助を否定するのか,といえばそうではない.特に医療の領域においては専門職と切り離しての治療や,病気との付き合いはあり得ない.一方,専門職はSHGの存在意義を否定するのかといえば,また,そうでもない.本稿では,SHGと医療専門職のかかわりについて現状と課題を考察してみたい.なお,ここでは専門職と言う場合には対人援助職全般を指し,医療専門職という場合は医師,看護師,保健師など医療に関わる対人援助職を指すものと限定しておきたい.
古い調査ではあるが,レビ(Levy, L.H., 1978)1)によれば,748名の精神科外来の医療専門職の内,48%が患者をSHGに送致していることが判明している.
また,トドレス(Todres, R., 1982)2)がトロントで行なった,308名の医療専門職(病院や診療所および社会福祉機関を含む)を対象とした調査によれば,医療専門職は,セルフヘルプ運動を一過性のものではなく,援助形態として意義あるものと認識しており,SHGに対して好意的(4.46/5ポイント)で,被援助者に対してSHGを紹介するべきだと考えている(4.37/5ポイント)こと,さらにはSHGを紹介できるようにその名鑑を求めていることを指摘している.
しかしながら,すべてのSHGに対して医療専門職が肯定的であるかといえば,必ずしもそうではないこともトドレスの調査では明らかになっている.SHGが多様であることは必ず指摘されることではあるが,SHGが医療専門職に肯定されるものとなるための要件を明らかにすると共に,それらの要件を備えたSHGとなるための医療専門職の関わり方についても詳細に検討する必要がある,とも指摘している.この必要性についてはわが国においても,この数年,盛んに喧伝されるようになっている.
また,トロージャン(Trojan, A., 1989)3)は65団体の疾病に関するSHGから232人のメンバーを抽出し,詳細な調査を実施している.それによれば,SHGのメンバーはより積極的に生きるようになり,より合理的に投薬を受けるようになる.また,医療専門職といった権威者に対しても自信をもって自己表現を明確にするし,医療専門職のサービスの中の欠如する部分についても正しく批判する,という.この結果,権威者とも良い関係を築くことになるだろうとしたうえで,SHGによる援助は医療専門職のそれにとって代わるものではなく,どちらがより良いか,といった問題でもなく,両者が必要である,とも指摘している.
トロージャンはこの調査によってさらに,SHGが専門職からの支援を求めており,とりわけ,資金援助が求められていると指摘する.しかしながら,医療専門職による医療ケアの質と,狭い範囲の医療の成果からだけ判断するのではなく,健康関連の総合的なサービス領域で不必要な費用が投入されてはいないかどうか,といった観点からも評価する必要があり,専門職がSHGを支援するなら,セルフヘルプクリアリングハウス(セルフヘルプ支援センター)やセルフヘルプ情報センターが必要であると結論づけている.
では,SHGと医療専門職とはどのように協働しあうことができるのか.次に述べよう.
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