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はじめに
平成12年11月に施行された児童虐待防止法は,それまで「躾や体罰」という範疇の中で時として許容され見逃されてきたことが,実は「虐待」であるという大きな意識転換を日本社会にもたらすこととなりました。そしてマスメディアの報道を通じ,国民の児童虐待への関心を高めた結果,それまで漸増であった児童相談所における児童虐待処理件数が平成10年の6,098件に対し,公布1年前の平成11年は11,631件,12年は17,725件,平成13年23,274件と急激に増加しています。しかし児童虐待への国民の関心は高まってきたとは言うものの,現在も連日のように虐待のニュースが報道されており,虐待事例は減る傾向をみせていません。
児童虐待への対処には,現に起こっているケースへの適切な対処と起こさせないための予防という2つの方法があります。前者については,児童相談所,保健福祉,警察など行政機関や医療機関等との密接な連携の中で,より専門的な見地から,発見,対処,継続的フォローがなされる必要があります。一方,予防の見地では虐待を起こさせないという視点から,その予防のためのさまざまな活動が各所で図られつつあります。
社団法人母子保健推進会議*1)では,平成13年度より3年間,日本財団の助成を受け,母子保健推進員*2)や民生児童委員,主任児童員など児童虐待にかかわるボランティアを対象とし,19道府県市で延べ5,500名を対象に,子ども虐待防止のための研修会の実施を行なうとともに,「子ども虐待防止のためのサポート~母推ノート」と「お母さん,子育てを楽しんでいますか?」(写真1)のリーフレットの配布と,妊産婦や子育て中のお母さんたちへの積極的な声かけサポートを通じ,虐待への芽を早期に摘み取り,特に育児期に1人で悩ませない活動を行なってきました。この事業は全国の母子保健推進員らの努力もあり,声かけサポートとして成果をあげつつあります。しかし,各地で実施した研修会の活動報告では,家庭訪問時の若いお母さんたちへのアプローチの難しさが報告され,母子保健推進員など子育てを終えたサポーターと若いお母さんたちとの世代のギャップが浮かび上がりました。もちろん多くの場合,このギャップを乗り越えて活動をしているのですが,受け入れてもらうまでに大変な苦労を伴っているのが現状です。
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