連載 バルナバクリニック発 ぶつぶつ通信・3
産婦の仰天商売
冨田 江里子
1
1St. Barnabas Maternity Clinic
pp.558-559
発行日 2004年6月1日
Published Date 2004/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100766
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元気すぎる親子
真夜中にもかかわらず一緒についてきた4歳の女の子は元気だった。「父親はマニラに働きに行っている。上の子を見てくれる人がいないので連れて来た」と,産婦は説明した。陣痛で苦しむ母親をよそに,診療所にある玩具(日本の支援者からいただいた)を広げて遊んでいる。お産についてくる上の子どもたちにとって診療所は慣れない場所であり,普段あまり接することのない外国人がいて,いつもと違い苦しんでいる母親の姿に戸惑い,多くは明らかに否定的な態度(特に私に対して)を示すことが多い。父親か誰かがついてきていれば,さほど問題ではないが,子どもと産婦だけだと大抵ややこしいことになる。でもこの子は苦しみ叫んでいる母親を気にも留めないようだ。私が本を出せばそれを見て楽しみ,床に広げて遊んでいる。
この産婦がお産になったのは午前3時。子どもは新しい玩具を見つけたかのように喜び,生まれたばかりの赤ちゃんが置かれた母親のお腹にちょこんと頭を乗せた。きっとこの赤ちゃんが見た初めてのものはお姉ちゃんの鼻先だろう。お姉ちゃんは朝方まで眠ることはなく,赤ちゃんを撫でたりつついたりキスしたりして遊び続けた。
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