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はじめに
当院では自然分娩・フリースタイル分娩・家族立会い分娩で,母と子が一緒にいて,子が母乳を吸いたいときには吸わせ,泣く時には抱くことが当然と考えている。したがって,当院には「赤ちゃんと一緒にいたい」「母乳を飲ませたい」が叶う病院だからと来院される方が多いが,一般的にはまだまだ妊産褥婦や家族の望む出産や母乳育児のニーズに協力する病院は少ない。ほとんどの場合は病院のシステム上の都合を理由に,患者側に合わせてもらっているように思う。
私は公立の組織の中で20数年勤務してきた。そこではやはり病院側のシステムを優先させてしまう場面が多々あった。ある病院では,母子異室・時間授乳・ミルク補充・入院中に父親がわが子を抱く機会が1回のみといった制限があり,「誰のための出産なの?」と疑問をおぼえるようなシステムの中で助産師が働いていた。この時期が私にとっての転機であり,開業助産師の活動に関心を持つようになっていった。家族が立ち会って児の誕生を迎える事や,フリースタイル出産はもちろんのこと,「新生児に糖水やミルクを必要がなければ与えない」という姿勢でかかわった子がどのような経過をたどるのか,大変興味深かった。それが,助産院勤務のきっかけとなった。
半年の間,助産院に勤めた後にもう1つの転機が私におとずれた。当院のコラボレーションシステム開設にあたり,助産師を中心とした“病院の中の助産院”と“妊産褥婦および家族に満足していただける環境づくり”を病院という場で行なおうという呼びかけがあったのである。私はその考えに共感し,助産院で学び得た体験を生かした“病院の助産師”としての役割を担うこととなった。
開院後すでに約160例の分娩を終えた。医師との意見相違については,医師・助産師の職種・経験を問わず,意見を対等に交換し合った。そして安心安全の医療体制の中で,助産師中心の分娩と産褥のケアを満足してもらえるまでになった。まだまだ,試行錯誤の段階ではあるが,本稿では院外助産師と院内助産師の連携の現状を述べることとする。
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