- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
はじめに
生涯にこどもを産む数が極めて少なくなってきた今日,女性はかけがえの無い分身を納得のいくお産の中から得ようとしている。主体的にバースプランを作り,夫や家族とともにお産をし,仲間同士とも話し合い育児に当たるのが理想の姿のようになってきた。それはお産を科学することに終始し,知らず知らずに分娩の医療化の道を進んで来た筆者らにとっても,立ち止まり考える契機を与えてくれるムーブメントのようにさえ思える。
わが国の分娩への取り組みは,第2次大戦後アメリカ保健衛生局PHWの理念と指導により,従来の「待つ分娩」から医療介入しても「早く分娩を終結させる」方向にシフトし,今日に至っているが,その間,60年代からの産科診断技術の進歩や新生児学の発展は目覚しく,特に周産期救急システムの展開と相俟って,周産期死亡率,妊産婦死亡率は顕著に減少し,殊に前者は世界的にもトップクラスの水準に達しているのは周知である。
しかし,いつ異常事態が発生するかも知れない産科領域ではあるが,その一方で,その大部分は格別の処置もなく自然に経過していく実際もある。分娩が自然現象である以上,妊婦さんは強く管理されることなく,主体性を保って安心して安楽に自由な姿勢で出産したいのも当然である。
そこで,私たちは周辺高次医療機関とも連携をとりながら,妊娠・分娩・新生児期のリスク選別と適時の移送機会を保ちつつ,今日考えられる最も好ましい分娩・哺育環境を具現化してみようとしている。まだ,ほんの小さな試みではあるが産婦の満足度は極めて高い一方,周辺高次医療機関には大変なお仕事(稿を改めなければならないが,本邦では病院のランクづけもなく,まして緊急を引き受けなければならないといった義務的な強制力もなく,単に受取病院側の好意の中で緊急患者が搬送されている事実を認識しなければならない)を引き受けて頂いていると感謝の念でいっぱいである。
今回,新規開設したふれあい横浜ホスピタルを通して,病院と開業助産師との望ましい周産期管理のあり方を模索しているので,それぞれのスタッフの考えも含め報告したいと思う。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.