- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- サイト内被引用
はじめに
最近の母性統計の傾向(母子保健の主なる統計より)1)として,平成2年の年間出生数は1,221,585(人)であったのに対し,平成11年の年間出生数は1,177,669(人)と年々少産化が進んでいる。その一方で,低出生体重児数の年間出生数に占める割合は,平成2年が63.3(出生1,000対)に対し,平成11年は84.2と増加している。このうち,1,500g未満の割合も,平成2年が5.3に対し,平成11年は6.6と増加している。少産・少子化のなかで低出生体重児が増加した理由には,周産期医療の高度化のほかに,不妊治療による多胎妊娠例の増加などが影響していると思われる。また,妊産婦死亡率は平成2年が8.6(出生10万対)に対し,平成11年は6.1と減少してきているが,スイスの3.6,イタリアの4.3に比べまだ十分な成績とはいえない。
妊娠出産は正常に経過していても時に異常に移行する場合がある。異常のなかには,母児の生命に危険が迫るなど,救急性の非常に高いものもある。産科救急においては,的確で迅速な対応と同時に,子どもの障害発生を予防しなければならない現実がある。
子どもの障害発生の予防は,国の重大な関心事でもある。厚生省(現厚生労働省)1~3)は,1991年に公的医療機関に対して周産期救急システムの整備充実(ドクターカーの整備補助),1996年にエンゼルプランに基づく周産期医療対策整備事業などの施策を行なってきた。1999年の新エンゼルプランでは,妊産婦死亡,周産期死亡などのさらなる改善に,より安心して出産ができる体制を整備するために,総合周産期母子医療センターを中核とした周産期医療ネットワーク(システム)の整備を進めている。平成16年度までに原則として各県に1か所の総合周産期母子医療センターが整備される予定で,更なる産科救急医療の進歩が期待される。
しかしながら,これらのシステムは,病院間の連携を前提としたものである。産科救急には自宅や路上における救急処置も含まれる。現在,ドクターカーの普及が進められているとはいえ,まだ数は少なく,救急救命士や救急隊員がその役割を担っているのが現状である。
本稿では,産科救急におけるプレホスピタル・ケアの問題について述べたい。
Copyright © 2003, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.