特集 死と公衆衛生
ターミナル・ケアの概念
池見 酉次郎
1,2
Torijiro IKEMI
1,2
1九州大学
2北九州市立小倉病院
pp.513-517
発行日 1985年8月15日
Published Date 1985/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207090
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■ターミナル・ケアとは
ターミナル・ケアといわれる期間は,研究者によってさまざまである.アメリカでは,治療の見込みがなく,余命6ヵ月以内と考えられる場合を「ターミナル」とよぶのが通常である.日本の国民感情,社会事情,医療状況を考慮すると,日本におけるターミナル・ケアの期間は,2〜6カ月と考えられ,この時期における包括的なケアをターミナル・ケアという.末期癌とは,余命が3ヵ月以内で治療不能であり,転移をもつ進行癌で肉体的ならびに精神的な苦痛を伴うものである.この時点では,もはや治癒(キュア)は望めず,ケアが必要になってくる.かといって,医療者である以上,キュアをあきらめてよいはずがなく,最後までキュアの望みを捨てずに,あらゆる手段を尽くしてキュアをはかることはいうまでもない.近頃,末期患者という言葉が,「医療に見すてられた患者」と誤り解されやすい風潮は,是正されねばならない.末期においても,そうでない場合と同様に,キュアとケアは,最後まで併行してなされねばならない.実際には,ターミナル・ケアでは,キュアよりもケアの比重が高くなるのは止むをえないことである.このような視点から考えると,末期患者に対するケアも,本質的には,何ら異なるものではない.
ここで,ケアの意味について考えてみよう.ケアの目的は,身体の病変のみに限定せずに患者を全人的にとらえ,患者の個別性を尊重しながら,個々の患者にふさわしい生を全うできるように援助し,患者が人生の総決算をするのに協力することである.
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